『馬込文学地図』を読んだ

03 14, 2017
『馬込文学地図』近藤富枝 著。

大正の末期から昭和にかけて、荏原郡馬込周辺(大森~馬込付近)にたくさんの文士たちが移り住み、そこで濃い濃い人間関係が生まれ、恋愛、不倫、離婚・・・と様々なドラマが繰り広げられた、という話。

尾崎士郎、宇野千代、萩原朔太郎、室生犀星、北原白秋、川端康成・・・などなど、馬込文士村に集まった面々の名前を見ると、「おー!大物ばかり!」と、もうそれだけで崇敬の念が湧いてくるけれど、この本の中に描かれている彼らの生活模様を垣間見ると、「この人たち・・・変人なんじゃ」と思わずにはいられない。ある意味、ものすごく身近な気持ちになった。

萩原朔太郎が『妻を他の男に抱かせ、それをみて嫉妬することで沈滞した夫婦生活をもう一度新鮮なものにしたい』という願望を持っていた、というエピソード。
萩原朔太郎は馬込村に引っ越してきてすぐ、宇野千代に
「ぼくたちは倦怠期でね。もう一度夫婦間を緊張させるような愛の技巧を稲子(奥さん)に伝授してくださいませんか。谷崎さん(潤一郎)は友人の佐藤春夫に夫人をつきあわせて、夫婦の間に一種新鮮な気分を取り戻そうと考えているようですが、うまい手ですな」
と相談し、千代さんも「よっしゃ、私にまかせんさい!」と言わんばかりに、朔太郎の奥さんに自分の知り合いの青年たちを引きあわせちゃう。

朔太郎は奥さんのことを結婚当初から「不美人」「バカ」と下に見ていたわけだけど、宇野千代を介して奥さんにダンスを習わせたところ、みるみる上達し、若い男とキャッキャと踊り合うようになる。
服装もオシャレな洋装をするようになり、ヘアスタイルは断髪。見事なモガ(モダン・ガール)となった奥さんを、周りの若い男性が放っておくはずはなく・・・

初めは「新鮮さを取り戻すため」と、悪魔主義的な発想で奥さんを外に出した朔太郎だけど、次第に弱気になり、心に動揺が芽生え始めてきたところで、その命令にブレーキをかけようとしたけれど、時すでに遅し。奥さんは再び檻には戻らず・・・結局、二人は離婚することになる。

朔太郎は離婚はしたくなかったみたいだけど、これまた馬込住民であり、朔太郎の友人でもある室生犀星が『浮気な文明』という作品の中で萩原夫妻の冷戦状態を暴露するような形で世に発表してしまったもんだから、もう離婚は避けられなくなったと。

室生犀星は、朔太郎の奥さんをそそのかした宇野千代のことも目の敵にし(千代さんは頼まれたからやっただけなんだけど)、長い間二人は不仲だったそうな。文豪の世界もいろいろだな・・・

他にも、梶井基次郎が宇野千代に恋をし、それがきっかけになって尾崎&宇野千代夫妻が離婚へと向かった話や、妻子と愛人が二人もいながら、さらに別の女とかけおち事件を起こし、それでもどの愛人のこともキッパリとは手放すことができない広津和郎の話なんかも面白く読んだ。

それにしても、文豪たちの波瀾万丈な恋愛模様を見ていると、根っからの恋愛体質がそういう人生を創り出しているのか、それとも、「文豪としての自分」を保つために潜在的にネタ作りのためにそういう道を選んでいるのか、わからなくなる。
「貧乏、病気、失恋、このどれかがなければ小説は書けない」と謳われていただけあって、この時代の文豪たちは、見事に、このどれかがあるような・・・。このどれかがあるから文学が生まれるのか、文学を生むためにこれらの要因を自ら作り出しているのか、そこは微妙なところだけど。

しかし、いくら実在の人物の話だとしても、本当のところは誰にもわからないし、本人からしたら「いやいや、それは事実ではないよ」と言いたくなることもあるかもしれない。
でも、文豪だもの、そこは「私の人生もひとつのフィクションとして読んでもらえれば」くらいの寛容さがあるかもな。と思いながら、読んだ。

学びたがり屋さん

03 14, 2017
この前美容院で髪を切られながら、担当の女の子と
「私たちって、どんだけ『学び好き』なんでしょうかね・・・」
という話をした。

我々、妙に似ているところがあり、とにかく昔から「苦しいことがあったら、まずは本を読み、自然の中に身を置き、海や川や大地を眺めながら己を見つめる」ということが好きな、修行僧タイプ。

話を聞いていると、若い頃から苦しい時に手に取ってきた本の流れも同じで、笑った。

「己の枠を外せ!」的な興奮系自己啓発本

「ゆるく生きろ」的な脱力系自己啓発本

「心を観察してみよう」的な心理学本

「無駄なものは捨てよ」的な断捨離啓発本

「全ては自分が引き寄せている」的な引き寄せ本

「あなたは無条件で守られている」的な霊界本

「流れに身を任せよ」的なスピリチュアル本

「色即是空・空即是色」的な仏教本

「『私』とは何か」的なインド哲学本

・・・とにかく、もがいてきた。不器用ゆえに、もがいてきた。

外に原因を見つけようとしても、誰かや何かのせいにしようとしても、苦しさは全く消えないので、「苦しみを自分の中の学びとして昇華させていく」という方法にたどり着いたわけだけど、こういう気質って見方によってはマゾ的かもね・・・とお互いしみじみしてしまった(髪切られながら毎回こんな話になる←この時間すら学びにしてしまう生粋の学び好き・・・)。

結局、「より幸せになるために」「もっと良く、もっとたくさん」という思いがある限り、動き回る自分は止められず・・・

AよりもBがいいらしい、BよりもCがより自分に合う、CよりもDが本物、Dの改良版のEがもっと最高らしい・・・より本物を!より真実を!って・・・私はいったいいつまでもがき続けるのか。

世の中にはそんな、「もっともっと」「こっちがより良い」という情報が当たり前のように流れていて、その情報を受け入れてくれる人々がいるからこそ、消費社会が成り立っているんだろうけど・・・その「よりいいものを」「もっともっと」「こっちがほんもの」と進んだ先に果たしてゴールはあるのだろうか、と、自分が反応しない情報に対しては客観的に観察できるんだけどねぇ。

今、世間の中で「よし」とされている商品や方法論や観念が、はたして100年後、千年後にも残っているだろうか、と思うと、多分、ほとんどが消えている気がする。そう思うと、何もかもが砂の城のようにポロポロと頭の中で崩れていき、良いと思い込んでしがみついてきたものが、全て幻のように消え去るわけで。

・・・と、ほとんどが頭の中で消え去った今、それでもしぶとく残る思いは、やはり
「もっと自分の内面を見つめよう(だって今のままじゃダメだから)」
ということ・・・。
どうしても、学びが止められない。
なおやんが鉄道部品(私には何の価値も見出せないけど、なおやんにとってはお宝らしい)を集め続けるのを見て、「なんでこんなに集めるんだ・・・」と不思議に思うけど、それって私が自己探求をやめないのと実は同じことなんだな、と思った。ちょっと前まで私も「より本当の悟りとは」とか、「より本物の覚者とは」とか、探し求めている自分がいた気がする。
断捨離もある意味では同じで、物は減っても、「もっと捨てよう」「もっともっと」「もっとシンプルに」と思っているうちは、何かが増えていっている気がする。「捨てねば」という観念的なものが、積み重なっていくような・・・

この、「もっともっと」「より良く」を楽しめるならそのままでいいけど、私はその「もっともっと」に苦しさを感じるようになってきて、「もっともっと」と思わせている自分の中にある恐怖の種みたいなものを感じるようになったので(老いることを怖がって美容整形を繰り返す人、ってのが一番イメージしやすいかも。本人や同じ価値観を持つ人から見たらいいことに見えても、老いる恐怖を全く持たない人から見たら「あなたは怖がっているんだね」と、その人の中にある恐怖がハッキリ見える・・・ってやつ)それだったら、その恐怖の種を消してしまえば、「もっともっと」という馬車馬のような思い込みから解き放たれて自由になるのではないかと。

・・・と思いつつも、やめられないんだよね~自己探求!と、ドライヤーをしてもらいながら話した。

この悩み多き人生(大した悩みじゃないかもしれないけど)まだまだ学びは続くのであった・・・
プロフィール

YUKA

Author:YUKA
都内在住・夫婦二人暮らし。
多趣味な夫にわりとついていく私のおぼえがき日記です。
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(しかし最近は家に帰ってからノロノロと更新することも増えました…)

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